その子、最期まで飼い続けられますか?

2017年6月1日

ペットブームと言われて久しいですが、実はペットの飼育頭数(犬と猫)は減少傾向にあります。

2016年の一般社団法人 ペットフード協会による調査(2017/1/17発表)では犬・猫 推計飼育頭数全国合計は、1,972万5千頭(犬:987万8千頭、猫:984万7千頭)でした。最近は猫ブームと言われ、マスコミ等でも過剰にとりあげられていますが、実は猫の飼育頭数は横ばい(4年前との比較で1%増)、犬の飼育頭数は明らかに減少傾向(4年前との比較で14%減)にあります。飼育頭数の減少理由としては「集合住宅のため禁止」「十分世話ができない」「お金がかかる」「死ぬとかわいそう」「別れがつらい」などがあげられています。

その反面、2015年度に国内で販売などによって流通した犬猫は少なくとも約85万頭で、前年度より約10万頭増えています。しかし、流通量の3%にあたる約2万5千頭の犬猫が流通過程で死亡していたという報道がありました。

さらに全国の犬・猫の殺処分頭数は減少傾向にあるものの、それでも全国で82,902頭(2015年環境省)、埼玉県(さいたま市・川越市・越谷市除く)で1,134頭(2016年埼玉県)の命が無駄に奪われています。内訳としては全国、埼玉県ともに猫の方が犬を上回っています。

飼育頭数は減少しているのに、流通量は増加していて、さらに、“モノ”の流通のように途中で不良品として廃棄(死亡)されている。しかも大量に・・・。さらに、奪われなくてもよかった命がたくさん奪われている。日本のこの状況を皆さんはどう思いますか?

実際、動物病院で仕事をしていると、犬の場合は、いわゆる中型の“雑種”の犬はほとんど見かけることはなくなり、小型純血種や異なる小型純血種同士を掛け合わせた“mix犬”が連れてこられることが大半です。猫の場合は、飼育頭数は横ばいと言われていてもここ数年は雑種の“拾った猫”ではなく、純血種の “買ってきた猫”が明らかに増加しています。

冒頭にも書きましたが、日本人は“ブーム”でペットを飼う場合が多く、漫画やアニメ、テレビのドラマやCMに起用された種類の犬や猫を飼う傾向がとても強いと感じます。小型犬の代表といえばマルチーズ。そこから始まり、シェットランドシープドック、ゴールデンレトリバー、シベリアンハスキー、ウェルシュコーギー、キャバリア、ボーダーコリー、ダックスフンド、チワワ、プードル、柴犬、フレンチブルドック、ポメラニアン。猫はシャム、ヒマラヤン、ペルシャ、チンチラからアメリカンショートヘア、スコティッシュフォールド、マンチカン、ノルウェージャンフォレストキャット、ロシアンブルーなど・・・。種類によって性質や、生活スタイルが異なりますが、そこまで検討せずに飼い始めてしまい、結局はこんなはずではなかった、そんなつもりではなかったと飼育放棄につながることがあります。

最近では、“猫に家を乗っ取られた!”などと過激なテーマのマスコミ報道もありますが、屋外飼育(放し飼い)の猫ではもちろん、屋内飼育の猫でも、雌雄共に中性化手術(不妊・去勢)は必要です。猫は、人や犬の自然排卵と違って交尾の刺激によって排卵するので(交尾排卵)、かなりの高確率で妊娠・出産ができるのです。犬や猫に手術を受けさせるのはかわいそうだとか、自然のままでという考えもあるようですが、一般的には中性化手術は犬や猫自身の病気の予防にもなり、長生きにつながる可能性が高いと言われています。

また、高齢犬の介護によって、そのご家族が疲弊してしまうこともあります。そのため犬や猫の介護施設の需要も高まってきています。欧米では介護しなければならないほど高齢な犬猫の場合、その犬猫のために安楽死を望む飼主も多いようですが、日本では最期まで介護し続ける傾向が強いようです。

さらに、お子様が小さいころに飼いはじめた犬猫が高齢になった時には、お子様はすでに独立し家にはおらず、高齢になったお父様お母様が、高齢動物の介護をする犬猫版“老々介護”の割合も多くなっています。

高齢者の独り暮らしが寂しいだろうと、お子さん、お孫さんから子犬、子猫を贈られる場合もあるようですが、高齢者が先にお亡くなりになり、お子さん一家は犬猫が飼えないので、残された犬猫が路頭に迷うということも実際に起こっています。

 犬を飼いはじめたが、仕事や学校で、ほぼ一日中ケージの中で飼育し、散歩は週に何回かだけという飼い方をしている方も増えています。ストレスのせいか、自分の尾を追いかけたりかじったり、指先の毛がなくなるまで舐め壊したりすることもあります。

犬猫を飼う事で子供が心豊かに育っている、家族のコミュニケーションが増えた、生活に潤いや安らぎを実感できるようになった、などなど良いこともたくさんあります。しかし、犬猫を取り巻く現状は上記のような問題点が多数存在するのです。

問題が大きくなると行政の責任は?とよく言われますが、そもそも行政に言われて犬猫を飼いはじめたのではありません。飼い主一人一人の責任なのです。犬猫の寿命は実際伸びており、現在平均寿命は14歳くらいと言われています。動物病院には病気の犬猫たちが連れてこられますので、12~13歳で亡くなる(寿命ではなく病気が原因)ことが多い印象を受けますが、14~17歳で認知症や介護生活の末、大往生という犬猫も増加しています。猫は20年以上生きる場合もあるのです。

これから犬猫を飼おうとお考えの方は、15年から20年責任を持って飼えるだけの体力と経済力があるか、子犬、子猫からでなくてはいけないのか、ペットショップやブリーダー以外にも動物指導センターや動物愛護団体、保護団体からの譲渡という入手先があることもぜひご検討ください。

すでに犬猫を飼われている方は最期まで必ず、面倒を見てあげてください。どうしてもの時はできるだけ周囲の家族、親戚、友人に協力を仰いでください。そのために、犬猫が10歳を超えたら “犬猫の終活”を考えてあげてください。犬や猫は病気になっても認知症になっても、介護が必要になっても、最期は、ご家族に囲まれていたいはずですから・・・。動物病院の獣医師や動物看護師、介護施設の介護士はある程度のお力にはなれるかもしれませんが、どんなに頑張ってもご家族ほど犬猫たちを癒すことはできないのです。

 

その子、最期まで飼い続けられますか?

 

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