ウサギの奥歯(臼歯)の話

2018年12月3日

 ウサギの歯というと前歯(切歯)が印象的ですが、
 奥歯(臼歯)もしっかり生えているという事を知らない方が意外といらっしゃるようです。
 ご存知でしたか?
 今回は、そんなウサギの臼歯に焦点を当ててみようと思います。

  ウサギの歯は切歯、臼歯ともに一生涯伸び続けます。
 ウサギ本来の食生活では比較的カロリーの低い草を大量に食べています。
 飲み込み易くする為には臼歯でしっかり繊維をすり潰すという作業が必要となり、
 それを繰り返す事によって歯が適度にすり減ります。
 歯が伸びてくるスピードと摩耗するスピードのバランスがとれる事で
 正常な歯の長さが維持されています。

 日々、ウサギの診療をしておりますと この伸びと摩耗のバランスを崩した結果
 「臼歯の過剰伸長による不正咬合」を起こしてしまっているケースによく遭遇します。
 臼歯の摩耗が少なく伸びてばかりいる状態が続いた結果、
 口の中に過剰に伸びた臼歯がせり出し噛む事がうまく出来なくなり
 食餌をとれなくなります。
 伸びた臼歯が湾曲し舌に刺さっていたり頬に刺さっていたりするケースもあります。
 また過剰に伸びた臼歯で無理に噛む事になりますので、
 かみ合わせ面にはかなりの圧力がかかります。
 臼歯は過度な圧力を受けつつも無理に伸び続けようとしますので口の中だけではなく、
 かみ合わせ面より圧力の少ない本来伸びる方向とは逆方向である顎の骨側にも伸び、
 顎の骨を変形させ、進行すると骨を突き破り顎周りや眼下に膿瘍を形成したり
 眼球を突出させたりしてしまいます。

 では何故、伸びと摩耗のバランスが崩れてしまうのでしょう?
 原因は食生活に有るとされています。
 ほとんどのウサギはラビットフード(ペレット)をメインに食べていると思われますが、
 ラビットフードは栄養学的バランスには優れているのですが
 牧草などに比べて高カロリーに作られているので少量でも必要カロリーが取れてしまう事、
 ペレット形状なので噛み潰して飲み込んでしまい臼歯をすり合わせる動きが少なく、
 あまり臼歯が摩耗しない事があいまって、摩耗する量よりも伸びる量が多くなり、
 時間をかけて過剰伸長状態へと進行していきます。
 かみ合わせの異常が起こりますので当然、切歯も過剰伸長になっていきます。 

 こうなってしまうと全身麻酔をかけ歯科用タービンで歯を削り、
 全体的なかみ合わせの調整をしなければいけないのですが、
 処置をしたからと言って正常な歯のバランスに戻る事はありません。
 軽度の過剰伸長であれば歯を削る処置と食餌内容の改善によって
 矯正出来るケースがあるものの、程度にもよりますが定期的に処置をしなければ
 いずれ同じ状態になってしまいます。

 食餌内容はとにかく臼歯を沢山すり合わせさせる為に牧草や葉野菜がメインとなります。
 薄くて硬めの牧草は飲み込む為には、かなりよくすり潰さなければなりませんので
 臼歯を摩耗させるには威力を発揮します。
 噛み潰すのではなくすり潰す食餌内容を心がけて下さい。

  ウサギの口は犬や猫の口と違ってパカーンと大きく開ける事が出来ない為、
 自宅で臼歯をまじまじと観察する事はまず不可能です。
 臼歯の状態によっても症状にはバラツキがありますので、
 異常が有るのか無いのかを判断するのは一般の飼主さんには難しいでしょう。

 この記事を読んで食餌内容に心当たりがある飼主さんは、
 早めにウサギの診療を行っている動物病院でチェックしてもらう事をお勧めします。

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