住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドラインについて

2010年12月19日

皆さんは日本で飼育されている犬や猫の数をご存じですか?
ペットフード協会によると、日本で飼育される犬や猫は2,700万頭と推計されています。実はこの数、日本の未成年者よりも多い数なのです。日本人はいかに動物が好きか、よく分かりますね。
しかし最近、動物の飼育をめぐるトラブルも増えています。いくら多くの方が動物を好きでも、さまざまな価値観や感情をもつ人々が暮らす社会の中では、適正に動物を飼育するためのルールが必要です。特に、人と人、人と動物との距離が近い住宅密集地においては、より周囲への配慮が重要です。
このため、国(環境省)では動物の飼い主と地域の住民の方が共通の理解をもって暮らしていけるよう、平成22年2月に「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」を作成していますので、今回はこちらを御紹介いたします。

○住宅密集地における犬や猫の飼育

住宅密集地では、他人のことを考えずに動物を飼育するとさまざまな問題が生じます。
ここでは、住宅密集地で犬や猫を飼育するときに気をつけたいことが次のように書かれています。

○犬を飼うとき

犬小屋の周辺は常に清潔に。汚れていると悪臭や害虫発生の原因になります。
犬小屋は隣家との境界付近に置かないようにするなどの隣家の配慮が必要です。
「鳴き声」は十分に配慮しましょう。犬が吠える原因を調べて、それにあった対策をとる必要があります。
犬とのコミュニケーションを十分に取り、ストレスの軽減に努めてください。

○猫を飼うとき

猫は室内で飼うことをオススメします。屋外の猫は病気や事故が心配です。
トイレを用意しましょう。トイレは比較的簡単に覚えます。猫はきれい好きなので、トイレはいつもきれいにしておくことが大切です。
猫はよく爪をとぎます。専用の爪とぎを用意してあげましょう。
猫は高い所に登ったりすることが大好きです。室内では市販のキャットタワーなど高低差があるものを上手に使うことで猫が楽しく遊べます。
首輪に迷子札を付けておくことも考えましょう。

○室内飼育で気をつけたいこと

動物の健康と安全を考えたとき、室内で飼育することはとても有効です。また、動物が身近にいることで、今まで知らなかった行動や表情に気がつくかもしれません。
ただし、人との距離が近くなるからこそ次のような注意も必要です。
犬や猫は人に感染する病気を持っていることがあります。逆に、人の生活の中には動物に害を及ぼすものもあります。
犬や猫は暑さが苦手です。夏場に留守にするときはエアコンなどで室内温度に気をつけてあげてください。飲み水も忘れずに。
犬や猫を家族の一員として接することは素晴らしいことですが、ペット動物も社会の一員であることを心がけましょう。

○集合住宅における犬や猫の飼育

近年では、犬や猫を飼育できる集合住宅が増えています。しかし、集合住宅はさまざまな生活環境の方が一緒に住んでいますので、戸建ての住宅に比べてさらに配慮が必要です。

飼育条件や共用部分での動物の取扱など、管理規約を遵守することが必須です。規約では飼育可能頭数や動物の大きさが決められている場合もあります。

壁や床を挟んでお隣さんが住んでいますので、鳴き声や音に十分に配慮する必要があ ります。
ベランダでのブラッシングや排泄等の世話は、被毛や臭気が苦情の原因になることがあります。
普段から近隣へごあいさつをしておくことも大切かもしれません。
集合住宅では衝動的に動物を飼育することを避け、飼い主となる方が犬や猫の特性をよく勉強し、集合住宅で飼育できる動物かどうかを判断する必要があると書かれています。これは集合住宅だけでなく、動物を飼育しようとするすべての方に考えていただきたいことです。

○地域猫活動

皆さんは「地域猫活動」という言葉を御存知でしょうか。

最近、飼い主のいない猫に餌を与えることで、いつのまにか数が増えてしまい、そのフン尿等をめぐってご近所の方とトラブルになるケースをよく耳にします。

「地域猫活動」とは、地域住民と飼い主のいない猫との共生をめざし、不妊手術を行ったり、新しい飼い主を探して飼い猫にしていくことで、将来的に飼い主のいない猫をなくしていくことを目的としています。
この活動を実施するうえでは周辺住民の理解が不可欠です。地域で十分な話し合いを行い、活動を行うかを検討し、意志の統一を確認したうえで始めることが必要です。

「かわいそう」という思いで猫に餌を与えたい気持ちもわかります。ただし、これにより増えすぎた猫が、畑や庭を荒らしてしまうかもしれません。適正な世話を受けられず、交通事故に遭ったり感染症にかかってしまうかもしれません。

人間の一時的な感情によって猫が悪者になることがないよう、改めて考える必要があると思います。

○終わりに

今回は、環境省が作成した「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」を簡単に紹介しました。もっと詳しく知りたい、という方は環境省HP(最後にURL)に全文が掲載されておりますので、そちらをご覧ください。

犬や猫は「かわいい」という気持ちだけでは飼い続けることはできません。このガイドラインでは「飼い主の心構え」も記載されていますので、これから犬や猫を飼い始めようと考えている方は、ぜひ御一読ください。

 

リンク:環境省HP「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」(PDF)

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