ふぐの食中毒を防ぐ獣医師の仕事―食品衛生監視員その2―

2020年2月12日

〇ふぐを安全においしく食べるために

 獣医師の仕事として、食品衛生監視員については以前(2018.5.30)ご紹介しました。
 今回はその中でも、ふぐの安全性を確保するための仕事についてご紹介します。 

 ふぐはとても魅力的な食べ物ですが、猛毒があることは昔から知られています。
 正しく調理しないと食中毒を起こし、時には死に至ることがあります。

 獣医師などの免許を持ち、食品衛生監視員として任命をされた職員は、
 どのように流通するふぐの安全を守っているのでしょうか?

 

〇ふぐの毒って?

 ふぐ毒は麻痺による呼吸困難を引き起こします。その経過は非常に早く、
 食べてから20分~3時間後にしびれや麻痺を起こし、ひどい時には呼吸が
 できなくなって死亡することもあり、大変危険です。
 ふぐ毒は、テトロドトキシンであり、ふぐの肝臓や卵巣などの内臓、
 ふぐの種類によっては皮、筋肉にも含まれます。熱に大変強く、
 調理程度の加熱では無毒化されません。

 

 全国食中毒発生事例によると過去3年間(2016~2018年)における食中毒発生件数

(厚生労働省HP)          ※2019年は10月23日までの報告数で集計

 

総数(件)

ふぐを原因とする件数(推定)

2016年

1139

18

2017年

1014

19

2018年

1330

14

2019年※

516

8

 

○ふぐの調理は免許が必要

 ふぐを調理できるのは、特別な資格(国家資格ではなく、都道府県の条例等で規定)
 をもった人だけと定められています。ふぐにはいろいろな種類があり、
 毒のある部位もふぐの種類によって異なります。
 外見が似ているふぐも多く、中には皮や身に毒があるふぐもいます。
 ふぐのことをよく知っていて、毒のある部位をきちんと取り除くこと
 (除毒)ができる免許をもった人が調理をするから、食べても安全なのです。

 

○ふぐの安全を守る食品衛生監視員の仕事

 ふぐは、ふぐ処理営業許可を持つ飲食店で調理されます。
 このような店では専門的な知識と技能をもった資格者等が、ふぐの調理をします。
 また、ふぐ処理営業許可がない飲食店でも、ふぐ提供の届出を行えば
 仕入れた身欠きふぐ(除毒したふぐ)を調理、提供することができます。

 これらのふぐの調理を行う施設については、保健所にいる食品衛生監視員が
 定期的に監視指導を行い、設備や衛生管理について確認しています。

 

○埼玉県におけるふぐ業務の体制

 温暖化による海水温の上昇により、ふぐの雑種化が問題になっている
 ことはご存知ですか?実は、ふぐの調理資格のあり方についても現在、
 国で検討しています。ふぐ資格者を認定する立場にある私たち食品衛生監視員の
 スキルアップも、これまで以上に求められています。

 埼玉県では毎年、食品衛生監視員に対し、ふぐの見分け方や除毒の仕方について
 研修を行っています。
 こうした地道な取り組みが、ふぐの食の安全につながっているのです。

 

○コラム 「今でもなぞの多いふぐの毒」

 佐賀県には、「ふぐ肝特区」という毒を持たないふぐを養殖するという
 構想がありました。佐賀県は、ふぐの肝を個体ごとに検査すれば、安全は確保できる
 と主張したのです。これに対し、厚生労働省が平成29年3月、トラフグが毒を
 生成する仕組みが未解明であり、肝の提供は認められないと県に通知したことから、
 佐賀県は国の理解が得られないと断念しました。

 一方、ふぐの子糠漬けという石川県の郷土料理をご存知ですか?
 ふぐの卵巣を2年以上塩漬け及び糠漬けにすることで、毒素が消失すると
 される珍味です。資格免許をもつふぐ加工業者だけが製造することができます。
 できあがった糠漬けは、毒性検査の後出荷されます。
 しかし、ふぐ毒がどのように減少するのかはわかっていません。
 実は、平成17年にふぐの卵巣の糠漬けで食中毒事件がありました。
 加工業者は無免許で、漬け込みも1年半しか行っていなかったそうです。

 このように未だ不明な点が多いふぐの毒ですが、いずれにしても、
 知識のない人がふぐの調理に携わることはとても危険なことがわかりますね。

 

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 動物に触らない獣医さんの仕事―食品衛生監視員―2018.5.30

 

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