鳥インフルエンザの正しい知識と対応Ⅱ

2013年1月23日
冬は、渡り鳥が越冬のために、シベリアなどの北の国から日本各地に飛来します。ツグミ、ジョウビタキ、ユリカモメ、マガモ、オオハクチョウ、マナヅルなどが知られており、湖沼でエサをついばむのどかな風景は、冬の風物詩となっています。 ところが、これらの渡り鳥は、招かれざる客”鳥インフルエンザウイルス”を運んでくる可能性があるのです。渡り鳥は、鳥インフルエンザに感受性が低いものが多いので、見た目には判りませんが、その体内にウイルスを保持し、糞などにウイルスを排出している場合があります。  ここでは、鳥インフルエンザに対する正しい知識を持って対処いただくため、「鳥インフルエンザの正しい知識と対応」として既に皆様にご紹介した情報を、少し視点を変えて改めてお話したいと思います。
1. 「インフルエンザウイルス」ってなに?
インフルエンザウイルスは、「エンベロープを持つ、マイナス鎖の一本鎖RNAウイルス」として分類されるオルトミクソウイルス科に属し、ウイルスを構成する蛋白質の抗原性の違いにより、A型、B型、C型に大きく区分されます。 さらに、ウイルス粒子表面にあるヘマグルチニン(赤血球凝集素、HA:haemagglutinin)とノイラミニダーゼ(NA:neuraminidase)という糖蛋白の種類によって区分されています。 A型ウイルスにはHAとNAの変異が特に多く、これまでHAに16種類、NAに9種が確認されています。つまり、理論上はこの組み合わせの数、つまり16種類×9種類=144種類の亜型のA型インフルエンザウイルスが存在することとなります。なお、B型とC型は多様性が低く、亜型による分類は行われません。 また、一般に人や動物にインフルエンザを引き起こすのは、A型とB型のインフルエンザウイルスです。
2. インフルエンザウイルスはどこからくるの?
冒頭でも触れましたが、渡り鳥が普段生活している北の国の湖沼には、インフルエンザウイルスが保存され、そのウイルスに感染した渡り鳥が越冬のために飛来した土地にインフルエンザウイルスを持ち込むことが考えられます。渡り鳥は、その体内にウイルスを保持し、糞などにウイルスを排出して、他の野鳥類やニワトリなどの家きん(以下「ニワトリなど」といいます。)、その他の動物に感染します。 また、人と人の間で流行するインフルエンザウイルスは、年間を通じて、人から人に感染を繰り返し、特に冬期には、 気温・湿度が下がり、咳などで空気中に放出されたウイルスが移動しやすく、生存する期間も長くなるなどの環境条件が整うので、各地で流行を起こします。 ところが、人のインフルエンザウイルスを遺伝子レベルで調査した結果、カモなどの渡り鳥が、毎年、北極圏から運んでくる鳥インフルエンザウイルスを起源としていることが分かっています。
3. 「高病原性鳥インフルエンザ、低病原性鳥インフルエンザ」ってなに?                  
鳥インフルエンザウイルスは、ニワトリやキジなどの家きんに対する病原性の強さによって、強毒タイプと弱毒タイプに分類されます。                       強毒タイプのウイルス(高病原性鳥インフルエンザウイルス)がニワトリなどに感染すると、その大半が死んでしまいます。これが、高病原性鳥インフルエンザです。                       一方、ニワトリ等が弱毒タイプのウイルスに感染すると、症状がない場合もあれば、咳などの軽い呼吸器症状が出たり産卵率が下がったりする場合もあります。これを、単に鳥インフルエンザといいますが、H5、H7亜型のA型ウイルスが原因の場合のみ低病原性鳥インフルエンザと呼びます。 なお、高病原性、低病原性とはニワトリなどに対しての病原性であって、人への病原性ではありませんのでご注意ください。
4. 「高病原性鳥インフルエンザ、低病原性鳥インフルエンザ」が発生するとどうなるの?                  
ニワトリ(ペットや家畜)などで発生があった場合は、家畜伝染病予防法という法律によって、感染が確認されたニワトリなど(患畜)と感染が疑われる家畜(疑似患畜)は、他のニワトリなどに感染を広げないために全て殺さなければなりません。                       平成22年には、全国9県(宮崎県、鹿児島県、大分県、島根県、奈良県、三重県、和歌山県、愛知県、千葉県)の24農場において、高病原性鳥インフルエンザの発生が確認され、約183万羽ものニワトリが殺されました。 ※埼玉県においても、平成17年に、高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染した疑いのあるニワトリが確認され、約9万8千羽が殺処分されました。
5. 「高病原性鳥インフルエンザ」は人に感染するの?                  
インフルエンザウイルスにかかわらず、ある動物種で流行しているウイルスが、他の動物種に感染する場合、「種の壁」が存在します。「種の壁」を辞書で調べてみると「種の異なる生物の間では、生殖や感染症の伝播などが起こりにくいこと。」とされています。 インフルエンザウイルスの場合、例えば、ニワトリや豚などの動物の間で流行しているウイルスは、基本的に同じ動物種の中で感染と流行を繰り返します。しかし、ウイルスの変異や遺伝子再集合などにより、ニワトリから人、豚から人への感染能力を新たに獲得する可能性があります。 また、種の異なる動物のウイルスを大量に摂取した場合においては、ごく稀に感染の可能性があります。
6. 「新型インフルエンザ」ってなに?                  
種の異なる生物の間で感染を繰り返していたウイルスが、種の壁を越えて、人から人への感染能力を新たに有するようになったウイルスが引き起こすインフルエンザです。                       新型インフルエンザウイルスは、人類が感染を経験したことがないので、このウイルスに対する免疫を持っていません。つまり、人類の間で急速にまん延し、重大な影響を与えるおそれがあるのです。
7. 飼っている鳥をインフルエンザに感染させないために気を付けることはありますか?                  
鳥を飼っている方は、次のことに気を付けて飼育してください。
鳥インフルエンザウイルスを運んでくる可能性がある野鳥(特に渡り鳥)を近づけないようにしましょう。
鳥を飼っている場所はこまめに掃除し、フンはすぐ片付けましょう。
エサや水はこまめに取り替えましょう。
鳥の体やフンに触れた後は、手洗いとうがいをしましょう。
口移しでエサをあげたりするのはやめましょう。
これらは、鳥インフルエンザウイルス以外の鳥が持っているかもしれないウイルスや細菌、寄生虫から自分の身を守ることにもつながります。
8. 飼っている鳥が死んでしまった場合はどうすればよいですか?                                     
鳥は生き物ですから、人と同じようにいつかは死んでしまいます。そして、その原因も様々ですから、鳥が死んだからといって直ちに鳥インフルエンザを疑う必要はありません。原因がわからないまま、鳥が次々に死んでしまうということがない限り、鳥インフルエンザを心配する必要はありません。                       原因がわからないまま、鳥が連続して死んでしまったという場合には、その鳥に素手で触ったり、土に埋めたりせずに、なるべく早く獣医師や、お近くの県家畜保健衛生所にご相談ください。
9. 野鳥が死んでいるのを見つけた場合はどうすればよいですか?                                     
野鳥も様々な原因で死亡します。飼われている鳥と違って、エサが取れずに衰弱したり、環境の変化に耐えられずに死んでしまうこともあります。また、野鳥が死んだ場合には、鳥インフルエンザウイルスだけでなく、様々なウイルスや細菌、寄生虫が人に感染するのを防ぐことが必要です。野鳥が死んでいるのを見つけたときは、こうしたウイルスや細菌、寄生虫に感染しないよう、死んだ鳥を素手で触らないようにしましょう。死んだ鳥の処分の仕方については、お住まいの市町村、獣医師、お近くの県環境管理事務所にご相談ください。
10. 動物(家畜)を飼育する場合は何か届出が必要ですか?                                     
(1) 「家畜伝染病予防法」に基づく届出                           牛、水牛、馬、鹿、ヒツジ、ヤギ、豚、イノシシ、ニワトリ、ウズラ、アイガモ、アヒル、 キジ、七面鳥、ホロホロ鳥、ダチョウを飼育している場合は、その所有者が飼育している羽数などについて、毎年、県知事に報告することが義務付けられました。なお、詳しくはお近くの県家畜保健衛生所にお問い合わせください。
中央家畜保健衛生所 048-663-3072                                 Web http://www.pref.saitama.lg.jp/soshiki/k27/
川越家畜保健衛生所 049-225-4142                                 Web http://www.pref.saitama.lg.jp/soshiki/k28/
熊谷家畜保健衛生所 048-521-1270                                 Web http://www.pref.saitama.lg.jp/soshiki/k29/
(2) 「動物の愛護及び管理に関する法律」に基づく許可 人の生命、身体又は財産に害を加えるおそれがある動物は、事前に都道府県知事又は政令市の長の許可を受けなければ飼育又は保管できません。 なお、詳しくはお近くの県及び市保健所にお問い合わせください。
(3) 「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」に基づく許可 タイワンザル、カニクイザル、アカゲザル、かみつきがめ科カミツキガメ、タイワンハブの飼育は、環境省の許可が必要となります。 (埼玉県内では、申請先は関東地方環境事務所【環境省】になります。)

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