SFTS(重症熱性血小板減少症候群)

2025年9月8日

 近年マダニによる被害が増加しており、特にマダニ媒介感染症(病原体を保有するマダニに刺されることによって起こる感染症)が問題となっています。その中でもSFTS(重症熱性血小板減少症候群)の感染報告が全国的に増加しており、残念ながら獣医療現場において命を落とされた事例も発生してしまいました。SFTSの発生は西日本が中心でしたが、すでに日本全国に広がっています。2025年8月現在、埼玉県内での発生はありませんが、関東地域では複数例の発生が確認されています。また、7月に秋田県、8月には北海道でも初の発生が確認されています。全国のヒトの感染者数が8月時点ですでに過去最多を更新しているということもあり、更なる注意が必要です。

 SFTSはSFTSウイルスが原因の人獣共通感染症です。マダニに刺されて感染すること以外では、感染している犬猫からヒトや同居の動物が感染することもあります。ウイルスは感染動物の血液、唾液、糞、尿、涙などの体液に含まれ、感染源となります。ヒト、犬、猫はウイルスに対して感受性が高く、その中でも特にヒトと猫は感受性が高く、発症して重症化しやすい傾向にあります。症状はヒト、犬、猫においてほとんどが共通で、発熱、活動性低下(倦怠感)、食欲不振、嘔吐、血便等で、特に猫ではほとんどのケースで黄疸が出ます。重症化すると死亡することもあり、致死率は猫でおよそ50~60%、犬でおよそ35~45%とされています。また、ヒトの致死率はおよそ20~30%であり、新型コロナウイルス感染症の致死率よりも高いのです。

 SFTSに対する確立した治療法は無く、対症療法が中心となります。また、ワクチンも存在しないため、ワクチン以外の感染防御策が必要となります。
【感染動物に対する防御策】
飼育動物が感染または感染疑いの場合、できる限り隔離する必要があります。さらに前に記したような体液に直接触れないよう手袋やマスクなどを着用し、体液が付着した場所はアルコールや次亜塩素酸で消毒して下さい。
【マダニに対する防御策】
ヒトはマダニから身を守るために、野外では腕・足・首など、肌の露出を少なくしましょう。また、忌避剤(虫よけ剤)を使用することも推奨されています。
犬や猫はマダニ予防薬を使用しましょう。関東地域でも複数種類のマダニが分布し、その中には一年中活動するマダニもいます。SFTSの発生を見ても、3~4月に増える傾向にありますが、12~2月の冬季にも発生があります。つまり、マダニ予防薬は通年投与が推奨されます。

 今の時代、インターネットで検索すればいくらでも情報を得ることができますが、今回はその中でも特に知っていただきたい内容をご紹介しました。まとめると、
① SFTSの発生は西日本が中心でしたが、すでに日本全国に広がっているため、他人事では無いということ。
② SFTSは人獣共通感染症であり、「動物から動物への感染」はもちろんのこと、「動物からヒトへの感染」や場合によっては「ヒトからヒトへの感染」もあり得るということ。
③ 犬や猫のマダニ予防薬は、春から秋までの投与となりがちですが、通年投与が推奨されているということ。
これらの内容を意識していただくだけでも、飼育している犬や猫、そして飼い主自身をも守ることに繋がります。今後、ニュースなどでSFTSの発生が報道された際には、ぜひ関心を持っていただき、私たちにできる対策を周囲の方にも伝えていただきたいと思います。

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